兵庫県

2019年度著名作家招聘事業×テーマ展 「神農巌展 ―堆磁 生命の根源、そして祈り」

兵庫陶芸美術館では、国内外で活躍する著名な作家を招聘し、若き作り手たちに刺激を与えるとともに、幅広い人々により深く陶芸に親しんでもらうため、2006年より「著名作家招聘事業」を実施している。第14回となる今回は、泥漿(でいしょう)状にした磁土を何度も筆で塗り重ねて盛り上げ、器面に美しく浮かび上がる線文を施す「堆磁(ついじ)」という独自の技法を創出し、青磁・白磁の表現に新たな可能性を拓いた作家・神農巌氏(1957- )を迎える。
京都府福知山市に生まれた神農氏は、大学のサークルで陶芸と出会い、その面白さにのめり込んでいった。そして、在学中に見た中国宋時代や朝鮮高麗時代の青磁作品に感銘を受け、本格的に陶芸の道へ進むことを決意した。大学卒業後、京都市立工業試験場(現・京都市立産業技術研究所)で釉薬と成形の基礎を学び、京都府立陶工職業訓練校(現・京都府立陶工高等技術専門校)で轆轤の技術を磨いた神農氏は、さらに青磁の釉薬を研究するため、再び京都市立工業試験場専攻科に進んだ。その後、京都の窯元での5年間の修業を経て、1987年に滋賀県大津市に工房を構え、独立を果たした。
琵琶湖を見下ろす高台の工房で、憧れの青磁作品に触発されつつ、自分らしい表現を模索する日々の中、転機が訪れるのは、自ら考案した「堆磁」という技法をメインの表現とする作品を発表した2003年。「堆磁」のヒントとなったのは、京都での修業時代、欠けた器を泥漿によって修復する作業だった。最初は、模様の輪郭線に用いていたが、轆轤による端正なフォルムと堆磁による線文とがしっとりと溶け合い、一体化していくような造形へと展開し、水や女性などの生命の根源的イメージを表現するものとなっていった。年々、洗練されていく堆磁作品は、つねに高い評価を得て、2012年に紫綬褒章を受章、2013年に滋賀県指定無形文化財「青磁」保持者に認定された。
本展では、最初期から新作までの「堆磁」を中心に、その前身となった「堆磁釉彩」や近年、新たな試みとして取り組んでいる白磁の無釉焼締の作品など約30点を展示し、神農氏が全身全霊を込めて創り上げたやきもの芸術の深奥に迫る。

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