愛媛県

第38回特別展「恋する人形は華宵少女の夢中」展

人間はいつも「人形」に恋をしている。
ギリシャ神話に登場するキュプロス島の王ピグマリオンは、自らが彫り上げた象牙の女像に恋をする。この恋の病(ピグマリオニズム)を「人形愛」と訳したのは澁澤龍彦だが、江戸川乱歩は『ひとでなしの恋』で、夜な夜な土蔵の二階で「身の丈三尺あまり、十歳ばかりの小児の大きさ」の浮き世人形と逢瀬を重ねる新婚の男の話を書いている。これらの恋は、人形を人間のように愛する肉体の恋と言える。
一方、近年来注目されている「球体関節人形」について言えば、それらは肉体のリアリティとは結びつかない存在。肉体性よりもむしろ幻想性が重要視されていると言えるかもしれない。男性と人形は肉体で、少女と人形は幻想で結びつくようだ。少女にとって人形が「最も身近な他者であり、時には分身でさえある」(飯沢耕太郎)とすれば、球体関節人形は肉体の生々しさではなく、少女の幻想(夢)の世界と結びつきやすいということも納得がいくだろう。少女の夢は人形の夢であり、少女の恋は人形の恋なのだ。
ここに華宵少女と人形の結びつきがうまれる。華宵少女には現実の肉体の生々しさはない。むしろそれらを極力排除した人工性がその魅力でもある。さらに少女の夢は単に淡く優しいものだけではなく、時に悲劇的であり残酷でもあり、それが妖艶さとエロスを生み出す。
飯沢は「少女と人形は、誰も踏み込むことを許されていない、秘密の王国の二人だけの住人のようだ」と妄想するが、まさに人形の恋は華宵少女の夢の中で増殖していくのである。

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