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きくちちき絵本展 しろとくろ

絵本作家・きくちちきが大切にするのは、“絵本を作りたいという純粋な気持ち”。2012年刊行のデビュー作『しろねこくろねこ』(学研プラス)は、翌2013年、スロヴァキア共和国で開催されている世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」(BIB)にて、「金のりんご賞」を受賞。一躍、気鋭の絵本作家として注目される。デビュー後は、墨を用いた流麗な線描と余白を生かした作風から一転、勢いの増した筆の動きにあわせて、多様な色が画面を彩るようになった。父親となった喜びとともに、きくちは次第に、「金のりんご賞」の受賞日に誕生した愛息を主人公に投影させて絵本を作るようになる。実体験に基づき、具体的なエピソードをもとにすることもあるが、息子の成長を動物や自然の摂理になぞらえる場合も多く、そのつど作風を変えながら、何冊もの美しい絵本を生み出した。
「世界観がリンクするような2作の絵本を作ってみませんか?」という、同館からの問いかけに、本展にあわせてきくちが手がけた新作絵本は、猫の“しろ”と犬の“くろ”が主人公のふたつの物語。講談社の尽力を得て、素晴らしい2作の絵本が誕生した。ふたつでひとつともいうべき、『しろとくろ』(講談社 2019年)と、本展の図録掲載のために描かれた『くろ』(武蔵野市立吉祥寺美術館 2019年)もまた、愛息の姿を投影して描かれている。今回、新作絵本2作の原画全点とラフスケッチ、加えて “絵本にならなかった原画”もあわせて展示。1冊の絵本を完成させるために、多いときはひとつの場面で100枚以上、納得するまで描き続けて推敲を重ねる、きくちの制作への真摯な姿勢が伝わってくる。
デビューから現在までわずか7年間で生み出された絵本は、20冊以上。きくちは、自身の絵本を“100年越しの手紙”であって欲しいと願っている。今、絵本を手に取ってくれている人、そして100年後の誰かの心にも寄り添えるように…。本展では、代表的な絵本原画や、デビュー前に自費出版していた手製本の原画のほか、今回のために制作された大型のバナー作品や立体作品を含め、約200点を展示。きくちちきのみずみずしい感性と、美しく力強い線描が息づく、絵本の世界を楽しんでほしい。

開催概要

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