群馬県

本と美術の展覧会vol.3「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」

絵画からデザインへ、そしてデザインから絵画へ。1989(平成元)年、前年まで在籍していた美術学校で目にしたアルバイト募集の貼紙をきっかけに出版社へ入社し、デザイナー/アートディレクターとしてのキャリアを開始した佐藤直樹(1961年東京都生まれ)は、自身のこれまでの仕事を振り返って、「時代の流れの中ではじまった」と語っている。
たとえばそれは、今では一般的であるパソコンを用いた印刷物のレイアウト・デザイン作業(デスクトップパブリッシング=DTP)が、佐藤がその仕事をはじめる1990年前後に欧米から日本に普及してきたことにまずあらわれた。印刷技術の新しい時代の幕開けのなかで、佐藤はDTP技術を積極的に学び、関わる雑誌やその他の紙媒体に意識を全投入するようにして数々のデザイン(エディトリアルデザイン)を手がける。グローバリゼーションが進む2000年代に入ると、世界流通を前提としたグラフィック雑誌を自ら発刊、さらにはその延長線上で、都内で空きビルを活用したアート・デザイン・建築の複合イベントも企画・実施した。
その幅広い活動は、デザイナー/アートディレクターという呼称だけではとらえにくいものだ。そして、東日本大震災前の2010年代に入ると、「それまで意識したことのなかったある場所の気配に身体が反応した」ことをきっかけに絵画を精力的に描きはじめ、2013年には木炭壁画「そこで生えている。」の制作がはじまる。木炭で木製パネルに描きつけられた植物を主としたモノクロームの絵画は、完成が想定されないまま、いまや幅160メートルを超え、さらに日々増殖を重ねているようだ。
諸芸術におけるジャンルを考えたとき、これを、デザイナーから画家への転身と見ることも可能だろう。ですが、佐藤にとってこの転身のようなものは、時代と、佐藤が身を置いていた環境・状況のなかで必然的に起こってしまったことと考えればどうだろうか。つまり、デザイン(「紙面」)と絵画(「壁画」)は、佐藤が折々で対峙していた状況に対して全力を注いで行えることを考えた結果の表現方法の違いであり、それが「循環」的に繰り返されているということのようなのだ。
本展は、美術館と図書館の複合施設である同館が継続的に実施している「本と美術の展覧会」第3弾として、佐藤のデザインと絵画の仕事を、本展のため同地に足を運びながら制作された新作も含めて、はじめて同時に展観するもの。すなわち、佐藤直樹というひとりの人間による「本」と「美術」をご紹介する展覧会にほかならないが、そもそも、このようなジャンルの区別は、どこまで有効なのだろうか? 開催にあたり、「本と美術は、同じ場所から生まれてきているんじゃないか」「一番奥深いところまで潜ったら、何があらわれるのか」と問いかける佐藤の仕事から、そのことを鑑賞者の皆さまとともに考える機会としたいと思う。

開催概要

  • 会期

    2019.06.292019.10.20
  • 会場

  • 観覧料金

    一般500(400)円

    ※( )内は、20名以上の団体及び太田市美術館・図書館カード、ふらっと両毛 東武フリーパスをお持ちの方の料金
    ※65歳以上、高校生以下、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の交付者及びその付添人1人は無料
    ※おおた家庭の日(毎月第1日曜日)は中学生以下の子ども同伴の家族無料

    詳細は公式サイトへ

  • 主催

    太田市、一般財団法人太田市文化スポーツ振興財団
  • 休館日

    月曜日(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は祝休日のため開館し、翌日火曜日休館)

  • 開館時間

    10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
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